海山の食

大台山系の山々と熊野灘をむすぶ2本の川に注ぎ込み、海からは潮の満ち干きで黒潮の恵が流れ込み、海の幸・山(里)の幸・川の幸が豊かな海山。その豊かな恵みをご紹介します。

海の幸

渡利牡蠣

渡利牡蠣種牡蠣から一貫して白石湖育ち。白石湖は船津川河口付近にあり、潮の満ち引きで川の水と海の水が混じり合う汽水湖です。厳しい環境で育つため、身は少々小ぶりですが旨みが凝縮され、臭みがないので牡蠣が苦手な方にもおすすめです。生産量が約30トンと限られており、地元消費がほとんどの「幻の牡蠣」です。

アオサ

アオサ波静かな矢口湾で育つアオサノリは、生産量ナンバーワンの三重県で、平成23年度最高値をつけた逸品です。乾燥したアオサをさっと炙ってお味噌汁に入れたり、熱々ご飯にふりかけて醤油を垂らしたり…。入手困難ですが生は絶品です。

伊勢えび

活伊勢海老赤々として大きな伊勢えびは、生はもちろん煮ても焼いても美味しく、プリプリした身は食感まで楽しませてくれます。10月に解禁になると、港からいっせいに船が出るさまや、漁師が刺し網を手入れする姿など、食卓だけでなく港町の風景にも彩りを添えます。

鯛天然も養殖も盛んな鯛。釣りでも人気があります。神事や祝い事には欠かせない高級魚のイメージがありますが、漁師町ならではの価格で手に入ります。特にお買い得な手の平サイズはバーベーキューに最適です。

マンボウ

マンボウ江戸時代、たまたま紀州の殿様が食べて気に入り「港に上がったら城に運べ」と命じられたが、大きなマンボウをお城まで運ぶことはできず、漁師たちは仕方がなく港に上げずに船上で捌いた、というお話が残るマンボウ。フグの仲間なので味は淡白で、調理によってさまざまな姿や味わいに変化します。

カツオ(生節)

カツオ生節冷凍ではなく生で水揚げされるこの地のカツオは新鮮です。特に5月、夜に出港し、その日のうちに販売される「日帰りガツオ」は地元でも人気。種類も豊富で、カツオの種類によって生節や鰹節に加工されます。茹でて燻してある生節は、煮たり和えたり地元では欠かせない食材です。

川の幸

アユ

アユ天然遡上も多く、釣り人を楽しませてくれるアユ。特に銚子川の魚飛渓は、アユが飛び跳ねる様子からその名が付いたという馴染み深い魚です。ハラワタが醸しだす風味は大人の味わい。清流好みのその味をご賞味ください。

アマゴ

アマゴ清流の女王とも呼ばれるアマゴも天然遡上が多く、きれいな水で育っているので養殖でも臭みがありません。美しい姿は目も舌も楽しませてくれます。程よいサイズは塩焼きで、大きなものはバター焼きもおすすめです。

里の幸

イタドリ

イタドリ公園や道端で細くて硬いものを見かけることの多いイタドリですが、山の腐葉土など栄養豊富な土地で育つと、太くて瑞々しい茎になります。それを豊かな水で下処理して、漬け物やキンピラ、煮物などにして食べます。海山の食卓に欠かせない春の味です。

くき漬け

くき漬けサトイモの仲間「ヤツガシラ」の茎を塩と赤シソで漬けたお漬け物です。さっぱりした味でシャキシャキとした食感が楽しめます。栽培にも漬込みにも手間がかかりますが、蒸し暑い夏を乗り切るのに不可欠な海山のソウルフードです。海山の便ノ山区が発祥と伝わる伝統食です。

米水がきれいなら、米は絶対に美味しい。ここ銚子川のほとりで、有機肥料で土作りをしっかりして農薬や化学肥料を極力減らし、透明度バツグンの銚子川の水を惜しみなく使って作られるお米は、粒がしっかりとして甘みが強くモチモチとした食感が特徴です。

海山の郷土料理

豊富な海の幸・山の幸を使って海山で受け継がれている「郷土料理」を紹介します。

押し寿司

押し寿司甘めの酢飯の上に、細く切って味付けされた魚や野菜を並べ、殺菌効果があるといわれる花みょうがの葉を上にのせます。これを何段にも重ねてギューッと押して作る、彩り豊かなお寿司。祭りや結婚式など、お祝いの席に欠かせません。

牡蠣寿司

牡蠣寿司渡利牡蠣の生産地である相賀の渡利地区で、お正月や祝いの席で食べられてきた牡蠣寿司。貴重な渡利牡蠣を甘く煮付け、握り寿司にします。他所ではお目にかかれない一品、しかも絶品です。

さんま寿司

さんま寿司東紀州で獲れるのは脂の落ちたスリムなさんま。このさんまを酢に漬けた後、一昼夜寝かして棒寿司にしたのが「さんま寿司」。同じ東紀州内でも尾頭付きか腹開きか背開きか、など地域によって違いがあります。

くき漬けごはん

くき漬けごはんサトイモの一種の「ヤツガシラ」の赤い茎を、塩と赤シソで漬け込んだお漬け物。皮をむいて細かく刻んだら熱々ごはんの上へ。生節とおろし生姜をトッピングして醤油をタラ~リとまわし掛け、混ぜながらガウガウッとかき込むのが海山流。

魚ごはん

魚ごはん季節の魚を使った炊き込みご飯の総称で、贅沢に鯛や鰤を使ったものもあります。魚は飾りではなく、ふんだんに入っています。薄口醤油は使わないので色が濃いのですが、辛いのではなく少し甘めの味が特徴です。

あおさ汁

あおさ汁ダシと味噌だけのシンプルな味噌汁に乾燥したアオサを入れ、ひと煮たちしたら火を止める。簡単で香り豊かな美味しい味噌汁の出来上がり。アオサが新鮮で香り豊かなら、お椀に味噌汁を注いでからアオサを入れるだけでも。湿ったり香りが飛んでしまっても、さっと炙れば大丈夫。

大敷汁

大敷汁定置網のことを漁師さんの間では「大敷き(おおしき)」といいます。漁の後、獲れたばかりの魚で作った味噌汁が大敷き汁。サバ・イカ・ソウダガツオ・アジなど、新鮮な魚が種類も豊富に入り旨みがたっぷり。おめでたい時などには伊勢海老も入れます。